正直に書きます。
「臨床心理士」と聞いて、どんな仕事を想像するだろうか。心に寄り添う専門職。カウンセリングで人を支える仕事。そんな言葉の裏側で、多くの心理士が経済的な不安を抱えながら働いている。
大学院まで行って学費はたくさんかかって奨学金の返済に頭を悩ませながら…
手取り20万円、ボーナスは「ないよりマシ」程度
病院に勤める臨床心理士の月収は、手取りで20万円前後が相場だ。ボーナスが出ても年に数十万円程度。住宅手当や家族手当がない職場も珍しくない。
一見「専門職」に見えるこの仕事だが、医療現場での立ち位置は微妙だ。医師や看護師と比べて給与水準は大幅に低く、その理由は診療報酬制度にある。
カウンセリングに対して診療報酬はなく、自費がほとんど。そうなると自費料金がカウンセリング8000円という相場。
他の診療報酬との兼ね合いや、必要な見立てのための心理検査でなるべく収益を補填する。しかし、それはわずかな保険算定。
実際に患者さんの悩みの解決や、クリニック側の診断の目安や決め手。対応方針の役には大いに立つが、保険診療として認められていないことが多い。心理検査2時間やって所見書くのに3時間かかっても、1番高い点数で4500円。
心理面接の多くは医療収入に直結しないため、病院にとって「利益を生まない部門」と見なされがちなのだ。
同じ医療チームの看護師が月40万円の給与を得ている横で、自分は半分以下。
この格差を目の当たりにして、やるせなさを感じない日はない。
「やりがい搾取」──この言葉が頭をよぎる瞬間
それでも現場を離れられないのは、患者の変化を間近で見られるからだ。
長く不眠に苦しんでいた人が、少しずつ表情を取り戻す。「あなたに会えてよかった」と言われる。
その瞬間は、どんな報酬よりも尊い。
だが同時に、ふとこんな問いが浮かぶ。
「私の心は、誰が支えるんだろう」
やりがいがなければ続かない。けれど、やりがいだけでは生活できない。この矛盾の中で、多くの臨床心理士が揺れながら働いている。
長く続けるために──自分を守る技術
この仕事を続けるには、自分自身のケアが不可欠だ。ときには「頑張らない選択」も必要になる。
認知行動療法の視点で言えば、「できなかった自分」を責めるのではなく、「今の自分にできたこと」に目を向ける。それだけで、心の負担は軽くなる。
マインドフルネスの考え方も役に立つ。結果を追い求めるのではなく、「今この瞬間の関わり」に意識を戻す。ある面接がうまくいかなかったとしても、「それが今日の自分のベストだった」と受け止められれば、明日への一歩は軽くなる。もちろん反省もする。
病院の枠を越えて──広がる働き方の可能性
臨床心理士の仕事は尊い。だが、それに依存しすぎると、生活が成り立たなくなる。
最近では、副業としてライティングや企業研修を手がけたり、オンラインカウンセリングを始めたりする心理士も増えている。
スクールカウンセラーとして週一回追加で働いている人もいる
病院という枠に縛られず、自分のスキルをどう届けるか。それを考えることは、職業的な選択であると同時に、自分の人生を守る手段でもある。
あなたが元気になることが、心理士の希望になる
病院の臨床心理士は、決して完璧な人間ではない。むしろ、自分も傷つきやすく、疲れやすい、ひとりの人間だ。
それでも、あなたの回復を信じて、毎日カウンセリングルームに座っている。
だからもし、あなたが少しでも楽になったなら。少しでも前を向けるようになったなら。それを、心理士に伝えてほしい。
「ありがとう」「少し楽になった」その言葉が、心理士にとって何よりの報酬になるから。
あなたが元気になること。それが、心理士が続けていく理由そのものなのだ。
心が疲れたら、ひとりで抱え込まないでください。あなたを支えたいと思っている人が、病院で待っています。
📘参考
• 厚生労働省「心理職の人材確保に関する検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html
• 日本臨床心理士会「職能と待遇に関する調査報告書」
• e-Stat「賃金構造基本統計調査(医療・福祉分野)」
• 厚生労働省「職場における心の健康づくり」
https://kokoro.mhlw.go.jp/


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