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嫌われたくないから本音が言えないあなたへ|我慢してしまう心理とその代償

「本当は断りたい。でも嫌われたくないから言えない。」

そんな経験、ありませんか。

職場で仕事を頼まれても断れない。家族や友人に気を遣いすぎてしまう。本当は違うと思っていても、その場の空気を壊したくなくて飲み込んでしまう──。その積み重ねが、いつの間にか心の疲れやストレスにつながっている人は少なくありません。

この記事では、「嫌われたくなくて本音が言えない」心理の背景を、臨床心理士・公認心理師として20年近く現場に立ってきた視点から解説します。

目次

嫌われたくない気持ちは誰にでもある自然な心理

「嫌われたくない」と思う自分を責めてしまう人は多いものです。

でも心理学的に見ると、この気持ちはごく自然なもの。人は一人では生きていけない社会的な存在です。大昔から集団の中で助け合って生活してきたため、「仲間から拒絶されるかもしれない」という不安は、いわば火災報知器のようなもの。危険を知らせてくれる、生き延びるための大切なサインでもあったわけです。

だからこそ、職場で上司に意見を言うとき、友人からの誘いを断るとき、家族へ本音を伝えるときに不安を感じるのは、まったく珍しいことではありません。

問題なのは、その報知器が鳴りすぎて、自分の気持ちをまったく表現できなくなってしまうことです。

相談室でも、

「本当は断りたかったんです。」 「でも嫌われると思って…。」

そんな言葉を何度も聞いてきました。多くの場合、その人は優しくて、責任感があって、人を大切にできる人です。決してわがままな人ではありません。だからこそ、相手を優先し続け、自分を後回しにしてしまうんですよね。

こんな場面、身に覚えはありませんか

例えば、田中さん(仮名・30代・会社員)のような方は少なくありません。

田中さんは、周囲から「頼りになる人」と評価されていました。急な依頼が来ても、「大丈夫です」と引き受ける。休憩時間に相談を持ちかけられても、「いいですよ」と応じる。

でも本人の中では、少しずつ違和感が積もっていました。「また断れなかった」「本当は今日、余裕がなかったのに」。そんな思いを抱えながらも、それを誰にも言えずにいたそうです。

ある日、些細なミスを指摘されたことをきっかけに、涙が止まらなくなった。そのとき初めて、「自分がずっと我慢していたこと」に気づいたと話していました。

これは特別な話ではありません。同じような経験をしている方は、現場でも本当によく出会います。

本音を言えない人に共通する3つの特徴

もちろん全員に当てはまるわけではありませんが、本音が言えない人には、いくつか共通するパターンがあります。

① 相手の感情を優先しすぎる

「こんなことを言ったら傷つくかもしれない。」「迷惑をかけるかもしれない。」

そう考えるあまり、自分の気持ちを飲み込んでしまいます。相手のことを考えられるのは、その人の優しさでもあります。ただ、その優しさが自分自身にだけ向けられなくなってしまうと、少しずつしんどさが積み重なっていきます。

② 断ることを「悪いこと」だと考えてしまう

本来、断ることと相手を否定することは、まったく別の話です。しかし「断ったら嫌われる」と結び付けて考えてしまうため、自分だけが我慢する選択をずっと続けてしまいます。

③ 「いい人」でいようと努力し続ける

周囲から見ると「気が利く人」「優しい人」に映るかもしれません。しかし本人の心の中では、

「また断れなかった。」 「本当は嫌だった。」

という自己嫌悪が、静かに積み重なっていることがあります。この自己嫌悪は、外からはなかなか見えません。だからこそ、本人も「自分がしんどい」ということに気づきにくいのです。

我慢を続けるほど人間関係が苦しくなる理由

「我慢すれば人間関係はうまくいく。」

そう思っている人は少なくありません。

でも、長年いろいろな現場で多くの方と関わってきて感じるのは、我慢だけで良い人間関係が続くことは、ほとんどないということです。

我慢を続けると、自分の気持ちは少しずつ置き去りになっていきます。頼まれごとを断れず、仕事を抱え込み、家に帰ってから疲れ切ってしまう。その状態が続くと、「あの人のせいで」「なんで私ばかり」という気持ちが、心の中に静かにたまっていきます。

そしてある日、小さな出来事をきっかけに、感情が爆発してしまうことがあります。周囲から見ると突然怒ったように見えても、本人にとっては長年積み重ねてきた我慢の結果なんです。

先ほどの田中さんも、後から振り返って「あの涙は、あのミス一つのせいじゃなかったんですよね」と話していました。積み重なっていたものが、たまたまその場面で溢れただけだった、と。

本音を伝えないことは、その場を平和にすることはあっても、長い目で見ると関係を苦しくすることがある。だからこそ、「どう伝えるか」を学ぶことが大切なんですよね。

我慢は「優しさ」ではなく「先送り」かもしれない

我慢することを、「優しさ」だと感じている人は多いと思います。相手のために自分が引き受ける。それ自体は、悪いことではありません。

ただ、その我慢が一度きりではなく、ずっと続いていく前提になっているとしたら、それは優しさというより「自分の気持ちの先送り」に近いのかもしれません。先送りにした気持ちは消えてなくなるわけではなく、どこかに積み重なっていきます。

次の記事では、我慢でも自己主張でもない、その中間にある伝え方「アサーション」について解説していきます。

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この記事を書いた人

臨床心理士として20年ほど活動しており、病院、地域、教育の方面で、お子様から成人、高齢の方まで関わっていました。医療・精神科・メンタルヘルス・認知行動療法に強い記事を執筆✍️ 子育て/発達支援/福祉の情報発信や、千葉・柏エリアの地域紹介も行います。
資格:臨床心理士・公認心理師・MOS

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