「以前のように頑張れなくなった気がする」
「管理職になったのに、なぜか苦しい」
「このまま今の働き方を続けていて大丈夫だろうか」
そんな不安を感じたことはありませんか。
私たちは子どもの頃から、「努力すれば成長する」「昇進することが成功だ」と教わることが少なくありません。しかし、実際の人生はそれほど単純ではありません。
順調に見えるキャリアの途中で立ち止まることもあります。体力や価値観が変わることもあります。家庭環境や職場環境が変化し、以前と同じようには働けなくなることもあります。
そんな時代だからこそ注目されているのが「キャリア・レジリエンス」という考え方です。
キャリア・レジリエンスとは、変化や困難に適応しながら、自分らしく働き続ける力のことです。
それは根性や我慢の話ではありません。
むしろ、自分を客観的に見つめ、必要に応じて働き方や目標を調整する力だと言えるでしょう。
キャリア・レジリエンスとは何か
レジリエンスという言葉は、心理学では「回復力」や「しなやかさ」と訳されます。
ストレスや逆境を経験しても、そこから立ち直り、再び前を向いて歩いていく力です。
キャリア・レジリエンスは、その力を仕事や働き方の領域に当てはめた概念です。
異動、転職、人間関係の変化、昇進、降格、組織再編。
働いていれば、思い通りにならない出来事は必ず起こります。
そのたびに心が折れてしまうのではなく、その状況に合わせて自分を調整しながら進んでいく。
それがキャリア・レジリエンスです。
なぜ今、キャリア・レジリエンスが求められているのか
少し前までは、一つの会社で長く働き、年齢とともに役職が上がっていくことが一般的でした。
しかし現在は違います。
AIの普及。
働き方改革。
リモートワーク。
ジョブ型雇用。
副業の拡大。
働く環境は大きく変化しています。
昨日までの正解が、明日も正解とは限りません。
だからこそ、「環境を変えない力」ではなく、「環境の変化に適応する力」が重要になっています。
キャリアにはピークアウトの時期がある
精神科の臨床でお話を伺っていると、40代以降の方からよく聞く言葉があります。
「昔ほど頑張れなくなったんです」
「以前のような情熱が湧いてこないんです」
これは珍しいことではありません。
キャリアには波があります。
20代の成長期。
30代の挑戦期。
40代以降の再構築期。
人によって時期は異なりますが、ずっと右肩上がりで成長し続ける人はいません。
それにもかかわらず、多くの人は「昔の自分」と比較してしまいます。
しかし、本当に必要なのは過去との競争ではありません。
これからの自分に合った目標を見つけることです。
ピークアウトとは終わりではなく、人生の後半戦に向けた調整期間なのかもしれません。
管理職を降りることは失敗なのか
管理職になったものの、心身の負担に悩む人は少なくありません。
責任は増える。
部下の相談もある。
上司からの要求もある。
気づけば、自分のために使える時間やエネルギーがなくなっていた。
そんな方もいます。
その結果、「管理職を降りたい」と考えることがあります。
以前ならネガティブに受け取られたかもしれません。
しかし本当にそうでしょうか。
マラソンを走るとき、ペースを落とすことは負けではありません。
完走するための戦略です。
人生も同じです。
役職を降りること。
働き方を変えること。
部署を変えること。
それらは逃げではなく、長く働き続けるための調整である場合もあります。
キャリア・レジリエンスとは、「無理を続ける力」ではなく、「必要な時に方向修正できる力」でもあるのです。
自分を俯瞰する力が未来を変える
不調の真っただ中では、どうしても視野が狭くなります。
「この仕事しかない」
「もう手遅れだ」
「自分には価値がない」
そう思ってしまうこともあります。
しかし数年後に振り返ると、その出来事が人生の転機になっていることも少なくありません。
キャリア・レジリエンスの高い人は、問題の中にいても問題を俯瞰しようとします。
今起きていることは、本当に人生全体の問題なのか。
5年後の自分ならどう考えるだろうか。
そんな問いを持つだけでも、選択肢は増えていきます。
組織に依存しないキャリア観を持つ
会社は大切です。
しかし会社だけが人生ではありません。
肩書きも大切です。
しかし肩書きだけが価値ではありません。
本当に大切なのは、自分自身が積み上げてきた経験や強みです。
人を支える力。
専門知識。
コミュニケーション能力。
問題解決力。
そうしたものは、組織が変わっても失われません。
キャリア・レジリエンスの高い人ほど、「会社の中での自分」だけでなく、「人生全体の中での自分」を考えています。
まとめ|キャリアは何度でも作り直せる
キャリア・レジリエンスとは、どんな環境でも頑張り続ける力ではありません。
変化した自分を認め、その時々に合った働き方を選び直す力です。
若い頃と同じように働けなくなった。
管理職が苦しくなった。
以前ほど成果が出なくなった。
そんな変化を経験すると、多くの人は「自分が弱くなった」と考えます。
しかし本当にそうでしょうか。
人生のステージが変われば、必要な働き方も変わります。
家族ができることもあります。
健康状態も変わります。
大切にしたい価値観も変わります。
それなのに、昔と同じ働き方を続けようとすれば苦しくなるのは自然なことです。
キャリア・レジリエンスとは、自分を責めることではなく、自分に合ったペースへ調整していく力です。
役職を降りる選択もある。
働き方を変える選択もある。
学び直す選択もある。
そして、少し休む選択だってあります。
キャリアは一本道ではありません。
遠回りだと思っていた経験が、後になって大きな強みになることもあります。
もし今、「このままでいいのだろうか」と悩んでいるなら、それはキャリアを見直すタイミングなのかもしれません。
焦らなくて大丈夫です。
キャリアは何歳からでも作り直せます。
人生は思っているより長く、選択肢は思っているより多いのです。


コメント