「休みはあるのに、なんか疲れが取れない。」
「せっかくの休日なのに、気づいたら仕事のこと考えてる。」
「何もしてないはずなのに、月曜日が近づくだけで体が重くなる。」
……そういう感覚、ありませんか。
もしピンときたなら、ぜひ読んでみてください。今日は、そのしんどさに名前をつけながら、少しだけ一緒に考えていきたいと思います。
私はこれまで精神科病院やデイケア、復職支援の現場で約20年間、相談室のイスに座り続けてきました。バーテンダーをやっていた時代も含めると、人の話を聞くようになってからはもっと長いんですが(笑)。
そのなかで最近、以前と少し違う変化を感じています。
「先生、ワークライフバランスが崩れているというより、そもそもライフがない気がするんです。」
こういう言葉が増えてきた。
問題は「仕事と私生活のバランス」じゃない。私生活そのものが、いつの間にかなくなっている。
そういう状態に陥っている方が、本当に多くなっていると感じます。
「ライフがない」というリアルな感覚
「ワークライフバランスを取りましょう。」
この言葉自体は、もうずいぶん浸透してきましたよね。でも現場で話を聞いていると、多くの方がこんな顔をします。
「……バランスの前に、ライフってどこにあるんでしょうか。」
朝から仕事が始まる。帰宅してもスマホには通知が来る。休日には翌週のタスクが頭をちらつく。夜、布団に入っても誰かのメールへの返信を考えている。
自由時間のはずなのに、全然自由じゃない。
これはある意味、現代の「見えない残業」だと思っています。時間は自分のものなのに、頭のリソースは会社に置いてきたまま。
相談室では、「何もしない時間って、どんな感じでしたっけ」と思い出せない方にも出会います。
これ、怠けでもサボりでもない。心が「休息モード」に切り替わりにくくなっている状態なんですよね。エンジンが止まらないまま走り続けている車みたいな感じで、燃料はなくなっていくのに走り続けてしまっている。
休みがあるのに休めない人に共通すること
現場で見ていると、休めない方にはいくつかの共通点があります。
- 休日でも仕事のことが頭から離れない
- メールやチャットを何度も確認してしまう
- 「休んでいる自分はダメだ」という罪悪感がある
- 何か生産的なことをしていないと落ち着かない
特に真面目で責任感が強い人ほど、このパターンに入りやすい。
以前、40代の男性の方がこんなことを言っていました。
「自分でも変だとわかってるんです。土曜の午前中、子どもと公園にいるのに、ずっとスマホが気になって。子どもが『お父さん、聞いてる?』って言われて初めて気づく。」
この方は周囲から見れば「デキる人」で、職場では頼られる存在。でも本人の中では、心のスイッチが一度もオフになっていなかった。
身体はソファで休んでいても、頭の中では会議が続いている。
それでは回復しないのも、当たり前っちゃ当たり前なんですよね。
「ライフ」がなくなっていく構造的な理由
昔は、会社を出れば物理的に仕事が終わっていました。今は違う。
スマートフォン一台で、仕事はどこへでも追いかけてくる。通知が来れば反応してしまうし、返信すればその瞬間に「仕事モード」に引き戻される。
さらに成果主義が強まったことで、「もっとやれるはずだ」という空気も職場に充満しやすくなった。
それは心理学の「ツァイガルニク効果」という現象と絡んでいます。人は「完了したこと」より「終わっていないこと」を強く記憶に残す性質がある。つまり、メールを送ったつもりでも、返信が来ていない間は頭が「タスク未完」と認識し続けてしまう。
だから意識では「仕事は終わった」と思っていても、脳はまだ働き続けているんです。
本人のせいでも、意志力の問題でもない。構造としてそうなりやすい環境になっている。
CBT(認知行動療法)から考える「休めない心」の正体
CBT(認知行動療法)の考え方を借りると、休めない状態には「認知の偏り」が関係していることが多いです。
簡単に言うと、出来事そのものより「どう受け取るか」が感情や行動を左右するという考え方。
休めない方の頭の中をのぞくと、こんな考えが隠れていることがあります。
- 「休むと評価が下がる」
- 「自分だけ楽をしてはいけない」
- 「他の人はもっと頑張っている」
- 「もっとやれるはずなのにやっていない自分はダメだ」
こうした思考が積み重なると、休息そのものに罪悪感が生まれます。
で、少し仕事をすると「ああ、とりあえず動いた」と安心する。すると、
不安になる → 仕事をする → 安心する
……この流れが癖になっていく。
短期的には確かに安心できるんですが、長い目で見ると「休めない習慣」がどんどん強化されていってしまう。
ここが厄介なところで、本人がサボっているんじゃなくて、むしろ「頑張り続けることで不安をなだめようとしている」状態なんですよね。
だからこそ、「休むことはサボることじゃない」という考え方に少しずつシフトしていくことが、回復のための大切なステップになります。
ブリーフセラピーが教えてくれる「ライフ」を取り戻すヒント
ブリーフセラピーという考え方があります。これは「問題をなくすこと」だけでなく、「例外を探すこと」に注目するアプローチです。
たとえば、「昨日は30分だけ散歩できた」「夕食中だけ仕事のことを忘れられた」といった小さな時間。これを「例外」と呼びます。
人はどうしても「できていないこと」ばかり探してしまいがち。でも実際に変化を生み出すのは、小さくてもすでにできている部分を育てることだったりするんです。
相談の中で、「最近ちょっとでもホッとできた時間、ありましたか」と聞くことがあります。
すると、「そういえば……子どもと遊んでいる間だけは忘れていました」「コーヒーを飲んでいる10分間だけは考えていなかったかもしれない」と思い出される方がいる。
以前、50代の女性の方がこう言いました。「入浴中だけは仕事のことを考えていなかった気がします。でも、そんな小さなこと関係ないですよね」と。
関係ある。めっちゃ関係ある。
そこから丁寧に育てていくことで、「ライフを取り戻す」入り口が見つかることは珍しくないです。
「ライフ」を取り戻すために今日からできる5つの習慣
大きく生活を変える必要はありません。むしろ大きく変えようとするほど続かない経験があります。
小さな工夫を積み重ねる方が、長続きします。
① 仕事終了の「儀式」をつくる
パソコンを閉じる前に「今日はここまで」と声に出す。これだけでも脳への「区切りサイン」になります。ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、わりと効きます(笑)。
② 通知を見る時間を自分で決める
通知が来るたびに反応するのではなく、「19時にまとめて確認する」と自分で決める。振り回されるのをやめる、ということですね。
③ 「何もしない予定」を先に入れる
「予定がない時間」ではなく、「休む予定」として手帳やカレンダーに書き込む。予定として存在させることで、罪悪感が薄れやすくなります。
④ 好きなことを予定表に書く
仕事だけが予定表を埋めていませんか。趣味でも、家族との時間でも、ただぼーっとする時間でも「予定」として扱う。それだけで意味が変わってくる。
⑤ 「休めた自分」を評価する
「今日はしっかり休めた」——それも立派な成果です。これ、意外とできていない方が多い。ちゃんと自分に「よくできました」を出してあげてほしいです。
まとめ|人生は「ライフ」があってこそ成り立つ
「ワークライフバランス」という言葉は今も大切だと思っています。
ただ、相談室でいろんな方の話を聞いていて、最近こんなことを思うんです。
バランスの前に、あなたの人生に「ライフ」はありますか。
仕事を頑張ることは、もちろん悪いことじゃない。でも人生は仕事だけではできていない。
誰かと笑う時間。ぼんやり過ごす休日。趣味に没頭する時間。何もしない、ただそこにいるだけの時間。
そういうものが積み重なって、「自分らしい生活」というものができあがっていく。
もし最近「休みがあるのに休めない」と感じているなら、それはあなたの頑張りが足りないからじゃない。
心が「ライフを取り戻したい」とサインを出しているのかもしれません。
今日、10分でいいんです。
コーヒーでも、散歩でも、ただ空を見上げるだけでも。仕事と関係のない、自分だけの時間をつくることから始めてみませんか。
……それが難しいなら、誰かと一緒に作戦会議するのも、一つの手だと思います。
その他人間関係などの書籍を執筆しています。
amazonプライム会員ですと無料です。おすすめします。


コメント