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慢性痛 マインドフルネス|痛みを消すより「人生を取り戻す」という考え方

「先生、もう痛みがなくなることは諦めています。」

精神科や心療内科の現場で仕事をしていると、このような言葉を耳にすることがあります。

そのたびに私が感じるのは、多くの方が「痛みをなくすこと」と「人生を取り戻すこと」を、同じものだと考えているということです。

もちろん、痛みが軽くなることは大切です。しかし、痛みがゼロにならなければ人生は前に進めないのでしょうか。

近年の慢性痛の支援では、この問いに対する考え方が少しずつ変わってきています。

この記事では、マインドフルネスや心理学の視点から、「痛みと戦い続ける人生」ではなく、「痛みがあっても自分らしく生きる」という回復について考えていきます。


目次

慢性痛への考え方は変わってきている

以前は、慢性痛は「原因を見つけて治すもの」という考え方が中心でした。

もちろん、原因が明らかな場合には適切な治療が必要です。

一方で、検査では大きな異常が見つからない痛みや、治療を続けても長期間続く痛みでは、それだけでは十分に説明できないケースがあります。

そこで現在は、身体だけでなく、脳の働きやストレス、不安、睡眠、人間関係、生活習慣などを含めた「生物・心理・社会モデル」という考え方が重視されるようになりました。

つまり、慢性痛は身体だけの問題でも、心だけの問題でもありません。

さまざまな要因が重なり合って続いていることが多いため、多面的な支援が必要になるのです。


痛みが人生の主人公になってしまう

慢性痛が続くと、生活の中心が痛みになってしまうことがあります。

朝起きたら最初に体調を確認する。

予定を立てても、「痛くなったらどうしよう」と考えてしまう。

好きだった趣味や旅行、人との約束も、少しずつ減っていく。

気づけば、「今日は何ができたか」ではなく、「今日はどれくらい痛かったか」で一日を振り返るようになります。

痛みが人生の主人公になってしまうと、自分にとって大切だったものが少しずつ見えなくなってしまいます。

これは決して意志が弱いからではありません。

痛みから身を守ろうとする自然な反応が続いた結果なのです。


マインドフルネスは「人生」に意識を戻す方法

マインドフルネスというと、「呼吸法」や「瞑想」のイメージを持つ方が多いかもしれません。

もちろん、それも大切な実践です。

しかし、本質はそこだけではありません。

マインドフルネスが目指しているのは、「痛みをなくすこと」ではなく、「痛みに奪われていた注意を、自分が大切にしたい人生へ戻すこと」です。

痛みがある日でも、家族と食事を楽しめた。

散歩で季節の花に気づいた。

好きな音楽を一曲聴けた。

こうした時間は、痛みがあるからといって失われるものではありません。

痛みは人生の一部かもしれませんが、人生そのものではないのです。


「できないこと」より「できること」に目を向ける

相談室では、「以前のように動けない」と落ち込む方が少なくありません。

その気持ちは、とても自然です。

ただ、回復とは「昔とまったく同じ状態に戻ること」だけではありません。

今の自分にできることを少しずつ増やしていくことも、大切な回復です。

五分だけ散歩する。

ベランダで日光を浴びる。

友人に短いメッセージを送る。

好きな本を数ページ読む。

一つひとつは小さな行動です。

しかし、その積み重ねは、「自分はまだ生活を取り戻せる」という実感につながります。


「今日は少し笑えた」も回復の一歩

心理職として支援を続ける中で、「回復しました」という瞬間だけを見てきたわけではありません。

「久しぶりに友人と電話しました。」

「散歩の途中で夕焼けがきれいだと思えました。」

「今日は痛みがあったけれど、孫と遊べました。」

そんな何気ない報告を聞くたびに、回復とは症状だけでは測れないものだと感じます。

痛みが少し残っていても、笑顔が戻る。

安心して眠れる日が増える。

誰かと会いたいと思える。

それも、確かな回復です。


痛みがあっても、自分らしい人生は歩める

慢性痛は、簡単な問題ではありません。

だからこそ、「頑張れば治る」「気持ちの問題だ」といった言葉では片づけられません。

一方で、痛みとの付き合い方は変えていくことができます。

その変化は、毎日の小さな選択から始まります。

「今日は何ができなかったか」ではなく、「今日は何ができたか」。

その視点を少し持つだけでも、人生の見え方は変わってきます。


まとめ

このシリーズでは、「検査では異常がない痛み」「痛みと不安の悪循環」「マインドフルネスの実践」、そして「人生を取り戻す」という考え方についてお伝えしてきました。

慢性痛と向き合う毎日は、決して簡単ではありません。

それでも、痛みがあることと、自分らしい人生を諦めることは同じではありません。

もし今、痛みに振り回されていると感じているなら、「痛みを消すこと」だけを目標にするのではなく、「自分にとって大切な人生を少しずつ取り戻すこと」を目標にしてみてください。

その一歩は、とても小さなものかもしれません。

しかし、その小さな一歩の積み重ねが、あなた自身の人生をもう一度動かし始める力になるはずです。

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この記事を書いた人

臨床心理士として20年ほど活動しており、病院、地域、教育の方面で、お子様から成人、高齢の方まで関わっていました。医療・精神科・メンタルヘルス・認知行動療法に強い記事を執筆✍️ 子育て/発達支援/福祉の情報発信や、千葉・柏エリアの地域紹介も行います。
資格:臨床心理士・公認心理師・MOS

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