MENU

褒められても素直に受け取れない人へ|それは謙虚さではなく心のクセかもしれません

「すごいですね」

そう言われたとき、あなたはどんな返事をするでしょうか。

「いやいや、たまたまです」

「そんなことないですよ」

「周りの人に助けられただけです」

もしこうした言葉が自然に出てくるなら、この記事は少し役に立つかもしれません。

もちろん、謙虚であること自体は悪いことではありません。

日本では昔から謙遜が美徳とされてきましたし、自慢ばかりする人よりも好感を持たれやすい側面もあります。

ただ、臨床の現場で多くの方とお会いしていると、謙虚さとは少し違うものを感じることがあります。

それは、

「自分に向けられた肯定的な評価を受け取れない苦しさ」

です。

仕事を頑張った。

結果も出した。

周囲から認められている。

それなのに本人だけが、

「まだ足りない」

「自分なんて大したことない」

「本当の自分を知られたらがっかりされる」

と感じている。

一見すると向上心が高い人に見えます。

けれど、その裏側では自分自身をかなり厳しく扱っていることが少なくありません。

今日は、褒められても素直に受け取れない人の心の中で何が起きているのかについて考えてみたいと思います。

目次

褒められると居心地が悪くなる人がいる

不思議なことですが、人によっては褒め言葉が嬉しいどころか苦しく感じられることがあります。

たとえば、

「仕事が丁寧ですね」

と言われる。

すると、

「いや、まだミスもありますし」

と返してしまう。

あるいは、

「いつも助かっています」

と言われても、

「そんな大したことしていません」

と否定してしまう。

本人に悪気はありません。

むしろ本当にそう思っていることが多いのです。

ただ、その背景にはある特徴があります。

それは、

「自分を見る基準が極端に厳しい」

ということです。

他人なら十分に評価できることでも、自分に対しては合格点を出せない。

100点でなければ失敗。

完璧でなければ認められない。

そんなルールが心のどこかに存在しています。

頑張り屋さんほど陥りやすい

褒められたことを受け取れない人は、決して怠け者ではありません。

むしろ逆です。

責任感が強い。

真面目。

人に迷惑をかけたくない。

期待に応えたい。

そうした特徴を持つ人が多い印象があります。

以前お会いした方もそうでした。

職場では高く評価されていました。

上司からの信頼も厚い。

後輩からも頼られている。

けれど本人は、

「全然できていないんです」

と言うのです。

話を聞いてみると、周囲が求める水準と本人が求める水準がまるで違っていました。

周囲は十分だと思っている。

本人だけが不十分だと思っている。

結果として、どれだけ褒められても心に届かないのです。

まるで底に穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるような状態でした。

「もっと頑張らないと」が人生の合言葉になる

こうした方の多くは、子どもの頃から頑張ることで評価されてきた経験を持っています。

良い成績を取る。

期待に応える。

迷惑をかけない。

我慢する。

そうすることで認められてきた。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

ただ、いつの間にか、

「頑張っている自分には価値がある」

というルールができあがることがあります。

すると、

頑張れていない自分

失敗した自分

休んでいる自分

弱っている自分

には価値がないように感じてしまうのです。

褒められても受け取れないのは、

「自分にはまだその資格がない」

と思っているからかもしれません。

インポスター症候群との関係

心理学では「インポスター症候群」と呼ばれる考え方があります。

簡単に言うと、

「自分の成功は実力ではなく偶然だ」

と感じてしまう状態です。

周囲は評価している。

成果も出ている。

それでも、

「たまたま運が良かっただけ」

「周りが優秀だっただけ」

「いつか化けの皮が剥がれる」

と考えてしまう。

医師や看護師、教員、心理職など、責任感の強い専門職でもよく見られます。

もちろん診断名ではありません。

ただ、褒め言葉を受け取れない背景の一つとして知っておいてもよいかもしれません。

自分には厳しく、他人には優しい

ここで少し考えてみてください。

もし大切な友人が同じ状況だったら、あなたは何と言うでしょうか。

仕事を頑張った。

結果も出した。

周囲から感謝された。

それでも本人が、

「まだまだです」

と言っていたら。

おそらく、

「十分頑張っているじゃない」

と言うのではないでしょうか。

多くの人は他人には優しいのです。

ところが自分になると急に厳しくなる。

これはとても不思議なことです。

臨床の現場でも、

「他人にはそんなこと言わないですよね?」

とお聞きすると、

「確かに言いません」

と笑う方が少なくありません。

セルフコンパッションという考え方

ここで役立つのがセルフコンパッションです。

セルフコンパッションとは、

簡単に言えば、

「苦しんでいる自分に対して思いやりを向けること」

です。

自分を甘やかすことではありません。

努力をやめることでもありません。

むしろ、

苦しいときほど自分を敵にしない姿勢です。

失敗した。

落ち込んだ。

思うようにいかなかった。

そんなときに、

「なんでできないんだ」

ではなく、

「苦しかったよな」

と声をかける。

たったそれだけのことですが、多くの人にとっては意外と難しいのです。

褒められたときの練習

もし褒められたときに否定してしまう癖があるなら、無理に考え方を変える必要はありません。

まずは行動だけ変えてみてください。

たとえば、

「ありがとうございます」

だけ言う。

心の中で納得していなくても構いません。

照れくさくても大丈夫です。

受け取る練習です。

最初は違和感があります。

けれど少しずつ、

「評価を受け取る」

という経験が増えていきます。

私たちは案外、自分が思っている以上に他人の評価を拒否していることがあります。

自分を責めることで前に進んできた人へ

ここまで読んで、

「でも自分を甘やかしたら成長できなくなる気がする」

と思った方もいるかもしれません。

その気持ちもよく分かります。

実際、自分を追い込むことで成果を出してきた人もいます。

ただ、その方法には限界があります。

若い頃は走れたとしても、ずっと同じやり方で走り続けることは難しい。

特に40代以降になると、

体力も変わる。

役割も増える。

親のこともある。

子どものこともある。

仕事の責任も重くなる。

そんな中で昔と同じように自分を追い込めば、心や体が先に悲鳴を上げることがあります。

だからこそ必要なのは、

もっと頑張ることではなく、

自分との付き合い方を見直すことなのかもしれません。

おわりに

褒められても素直に受け取れない。

そんな自分に気づくと、

「面倒な性格だな」

と思ってしまうかもしれません。

けれど、その背景にはこれまで一生懸命生きてきた歴史があります。

期待に応えようとしてきた。

頑張ってきた。

責任を背負ってきた。

だからこそ簡単には受け取れないのです。

もし次に誰かから褒められたら、

無理に信じなくても構いません。

ただ、

「ありがとうございます」

と一度だけ受け取ってみてください。

その小さな一言が、自分との関係を少し変えるきっかけになるかもしれません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

臨床心理士として20年ほど活動しており、病院、地域、教育の方面で、お子様から成人、高齢の方まで関わっていました。医療・精神科・メンタルヘルス・認知行動療法に強い記事を執筆✍️ 子育て/発達支援/福祉の情報発信や、千葉・柏エリアの地域紹介も行います。
資格:臨床心理士・公認心理師・MOS

コメント

コメントする

目次