我慢でも自己主張でもない伝え方「アサーション」。ここからは、今日から実践できる方法と、そのまま使える例文をご紹介します。特別な才能は必要ありません。大切なのは、一度に完璧を目指さず、小さな一歩を積み重ねることです。筋トレと同じで、いきなり重いものは持てなくて当然なんですよね。
実践法7選
① 自分の気持ちに気づく習慣をつくる
アサーションは、「どう伝えるか」の前に、「自分はどう感じているか」に気づくことから始まります。一日に一度でも、「今日は何が嬉しかっただろう」「何が負担だっただろう」と振り返る時間をつくることをおすすめします。自分の気持ちがわからなければ、相手に伝えることも難しいからです。
② 「断ること」と「相手を否定すること」を切り分ける
「今回はできません」ということと、「あなたが嫌いです」ということは、まったく別の話です。予定があるから断る、体調が悪いから断る——これは相手を否定しているわけではありません。この違いを意識するだけでも、断ることへの抵抗感は少し軽くなります。
③ 主語を「私は」にして伝える(アイメッセージ)
「あなたはいつも急に頼む」と言われると、責められているように感じる人が多いでしょう。一方で、「私は急な依頼だと予定を調整するのが難しいです」という伝え方なら、自分の状況を説明しているだけなので、相手も受け止めやすくなります。
④ 相手を尊重しながらお願い・断る練習をする
「声をかけていただいてありがとうございます。ただ、今日は予定があるので参加できません」というように、相手への敬意を示しながら、自分の意思も伝えることができます。白か黒かではなく、お互いに納得できる着地点を探す姿勢が大切です。
⑤ 完璧な伝え方を目指さない
「うまく言わなければ」と考えるほど、言葉は出なくなります。実際のコミュニケーションでは、多少ぎこちなくても構いません。完璧な言い回しよりも、自分の気持ちを誠実に伝えようとする姿勢の方が相手には伝わります。失敗しても、それは練習の一回です。
⑥ 小さな場面から自己主張を練習する
いきなり上司に意見を言うのはハードルが高いかもしれません。そんなときは、「今日はコーヒーではなく紅茶にします」「この席がいいです」というような日常の小さな自己表現から始めてみてください。こうした積み重ねが、自信につながります。
⑦ 嫌われることより「自分を失うこと」のリスクを考える
相談室で、「もっと早く相談すればよかった」と話す方の多くは、何年も我慢を続けてきた人たちです。もちろん、すべての人に好かれる必要はありません。本当に大切なのは、自分らしくいられる人間関係を少しずつ増やしていくことです。
シーン別・すぐ使える例文
仕事を頼まれたときに断る
仕事ができる人ほど、頼まれごとが増えます。そのたびに引き受けていると、仕事量だけでなく責任まで偏ってしまうことがあります。
「声をかけていただいてありがとうございます。ただ、今抱えている業務があるため、今日中の対応は難しいです。明日であれば対応できます。」
ポイントは、「できません」だけで終わらせないことです。代替案を添えることで、相手も予定を立てやすくなります。
上司へ意見を伝える
上司に意見を伝えることは勇気が必要です。だからといって何も言えない状態が続くと、仕事への不満やストレスが積み重なってしまいます。
「私としては、この方法の方が効率的ではないかと感じています。一度ご相談させていただいてもよろしいでしょうか。」
最初から相手を否定する必要はありません。「私はこう考えています」という形で伝えるだけでも、十分にアサーションになります。
家族やパートナーへ気持ちを伝える
家族だからこそ、遠慮してしまう人もいれば、逆に感情的になってしまう人もいます。
「最近少し疲れがたまっています。今日は一人でゆっくり休む時間をもらえるとうれしいです。」 「いつもありがとう。そのうえで、一つお願いがあります。」
こうした一言が入るだけでも、相手の受け取り方は大きく変わります。
友人からの誘いを断る
友人との関係でも、「断ったら悪い」と感じる人は少なくありません。しかし、本当に良い関係とは、無理をしなくても続く関係です。
「誘ってくれてありがとう。今回は予定があって行けないけど、またタイミングが合うときにぜひ誘ってください。」
「今回は難しい」という表現は、「あなたを拒否しているわけではない」というメッセージにもなります。断ることは、関係を終わらせることではありません。
アサーションを実践するときによくある悩み
本当に嫌われませんか?
残念ながら、「絶対に嫌われない伝え方」はありません。どんなに丁寧に伝えても、相手の受け取り方まではコントロールできないからです。
ただ、これまで我慢し続けてきたことで、本当に心は楽になったでしょうか。すべての人に好かれようとすると、自分自身を見失ってしまうことがあります。人間関係は、「誰にも嫌われないこと」ではなく、「お互いを尊重できること」で育っていくものです。
うまく伝えられず失敗したらどうすればいい?
最初から完璧に話せる人はいません。大切なのは、一度の失敗で「自分には向いていない」と決めつけないことです。「もう少しこう言えばよかったかな」と振り返るだけで十分。アサーションは知識ではなく、経験を積み重ねながら育てていくコミュニケーションだからです。
相手が高圧的な場合でも効果はありますか?
結論から言えば、相手によります。アサーションは万能ではありません。相手がハラスメントを繰り返す人だったり、威圧的だったりする場合には、伝え方だけで状況が改善するとは限らないため、一人で抱え込まず、信頼できる上司や産業保健スタッフ、家族、友人、専門家に相談することも大切です。アサーションは「一人で頑張る技術」ではありません。
まとめ|嫌われないことより、自分も大切にできる人間関係を目指そう
「嫌われたくない」という気持ちは、人として自然な感情です。だから、その気持ちをなくそうとする必要はありません。ただ、その不安から自分の気持ちを押し殺し続けると、心は少しずつ疲れてしまいます。
アサーションは、自分だけを優先するための自己主張ではなく、相手を思いやりながら自分の気持ちも大切にするためのコミュニケーションです。その積み重ねが、無理をしなくても続けられる人間関係につながっていきます。
「いきなり上手に話そう」と思わなくても大丈夫です。最初は小さな場面で、自分の希望を伝えてみることから始めてみてください。「今日は難しいです。」「私はこう思っています。」たった一言でも、それは自分を大切にする大切な一歩です。
嫌われないことだけを目標にするのではなく、自分も安心していられる人間関係を、少しずつ育てていきましょう。
アサーションのkindle書籍なども扱っております。
prime会員ですと無料ですので、以下ご紹介いたします。
佐々木いちなり kindle書籍


コメント