MENU

障害年金だけでは終わらない|就労移行支援が変わり始めている

障害年金を受給すると働けなくなると思っていませんか?近年は就労移行支援やリワーク支援の充実により、「休む」と「働く」の間にさまざまな選択肢が生まれています。障害年金・就労移行支援・リワーク・社会復帰の最新の考え方を臨床心理士が解説します。


目次

「年金をもらったら終わり」って、本当にそうなんでしょうか

相談室にいると、こういう言葉をよく聞きます。

「障害年金を申請したら、もう就職できなくなるんですよね」 「年金をもらい始めたら、人生が止まる気がして……」

その言葉の奥に、どんな気持ちがあるのか。少し想像してみると、「もう戻れないかもしれない」という怖さだったり、「ここで選択を間違えたら終わりだ」という緊張感だったりすることが多いんですよね。

気持ちはわかります。でも、これは大きな誤解です。

実は近年、障害年金・就労移行支援・リワーク支援の考え方は、静かに、でも確実に変わってきています。

以前は「働くか、働かないか」の二択しかないようなイメージがありました。でも今は、

  • 休みながら体を整える
  • 少しずつ社会とつながる
  • 体調に合わせて、働く準備を進める

こうした選択肢が少しずつ広がってきているんです。

障害年金は「終着点」ではありません。むしろ回復への通過点になり得ると言われています(参考:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」)。


障害年金=就労禁止、ではないって知っていましたか

ここ、すごく誤解されやすいポイントです。

制度上、障害年金を受給していても働くことは可能とされています。もちろん病状や障害の状態によりますが、「年金をもらったら働いてはいけない」というルールはありません。

実際に、厚生労働省の「年金受給者実態調査」では、障害年金を受給している方のうち約28%が就労しながら受給していたことが報告されています。

  • 障害年金を受給しながら就労移行支援を利用する
  • 短時間勤務と組み合わせて収入を得る
  • 障害者雇用枠で就労しながら年金を受け取る

こうしたケースは珍しくないと言われています(参考:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」)。

よくお会いするのは、こういう方です。うつ病で休職して障害年金を申請したけれど、「これで自分は社会から切り離された」とずっと感じていた。でも就労移行支援に通い始め、週3日のペースで通所を続けるうちに、「あ、自分まだ動けるんだ」と気づいた、という方。

「生活の土台が安定したことで、次のことを考えられるようになった」という言葉が印象的でした。

障害年金の目的は、「働けない状態を固定化すること」ではなく、「生活の土台を支えること」とされています。生活が安定することで、回復や社会参加に向けたエネルギーを少しずつ取り戻せると考えられているんですよね。


就労移行支援、「パソコン訓練の場所」だけじゃなくなってきた

「就労移行支援ってパソコンを学ぶところでしょ?」

そういうイメージ、まだ根強いですよね。もちろんその役割は今もあります。ただ、ここ数年で利用者層がずいぶん変わってきました。

うつ病・発達障害・双極症・不安症・適応障害……

こうした診断を持つ方が多く通うようになり、支援の内容も自然と変化してきています。就職スキルだけでなく、

  • 生活リズムの安定
  • ストレスへの対処法
  • 対人コミュニケーション
  • セルフケアの習慣化

こうした「働き続けられる土台づくり」が重視されるようになってきたと言われています(参考:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」)。

言ってみれば、「就職する力」を鍛える前に「生きていける力」を整える場所になってきた、という感じでしょうか。

スポーツに例えるなら、試合の練習の前に、まず体幹を鍛える期間みたいなものです。土台がなければ、どんなに戦術を練っても試合では使えないですよね。就労移行支援も、それに近い感覚で使える場所になってきていると思います。


リワーク支援が注目されているのには、理由があります

最近、「リワーク」という言葉を聞く機会が増えましたよね。

リワーク支援とは、休職した方が職場復帰を目指すためのプログラムのことです。

うつ病や適応障害では、「症状が落ち着いた=復職できる」とはならないことが多いと言われています。これ、現場にいるとほんとうに実感します。

「先生、もう症状はないんです。でも会社に行こうとすると体が動かなくて」という方、少なくないんですよね。

症状がゼロになっても、元の職場・元の働き方に戻れば、再び同じパターンで体調を崩してしまうケースも珍しくありません。だからリワークでは、症状の回復だけでなく、

  • 再発を防ぐための自己理解
  • ストレスマネジメントの実践
  • 働き方そのものの見直し
  • コミュニケーションのパターンを変える練習

こういったことに取り組みます。

「以前と同じ自分に戻る」のではなく、「以前とは少し違う自分で働く」ことをテーマにしているんです。

東京障害者職業センターのデータでは、リワーク支援を利用した方の毎年80%以上が職場復帰を果たしていると報告されています(参考:JEED「リワーク支援(メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰)」)。


社会復帰って、フルタイムで働くことだけじゃないんです

「社会復帰」という言葉を聞くと、フルタイムで毎日通勤する姿を想像する人が多いかもしれません。

でも、今の時代はもっと幅広く考えられています。

  • 週1回、外に出てみる
  • デイケアに通い始める
  • 就労移行支援に通所する
  • 短時間勤務からスタートする
  • 障害者雇用枠で少しずつ働く

どれも立派な社会参加です。

回復って、エレベーターみたいに一直線には上がらないんですよね。むしろ階段をのぼっては踊り場で休む、みたいな感じです。三歩進んで二歩下がることだってある。でも、その二歩下がったことが失敗じゃないんです。「戻れる場所がある」というのは、むしろ回復の証拠でもあります。

社会との接点を少しずつ取り戻していくことには、大きな意味があると考えられています。


「働けるかどうか」より、もっと大事なことがある

「先生、私、もう働けますか?」

これ、よく聞かれる質問です。

その問いに答える前に、少し確認したいことがあります。

「今の自分に合ったペース、見つかっていますか?」

無理をして復職すれば、また同じところへ戻ってしまうかもしれません。反対に、回復しているのに不安が先に立って一歩踏み出せない、という方もいます。どちらの苦しさも、それぞれ本物です。

「働く・働かない」の二択で考えると、どうしても追い詰められやすい。でもその間には、実はたくさんの選択肢があります。その選択肢を一緒に整理していくのが、今の支援の中心になってきていると思います。

作戦会議、みたいな感覚です。答えを教えるのではなく、「今どこにいて、どこへ向かいたいのか」を一緒に地図を見ながら確認する、そういうイメージですね。


まとめ|回復と社会参加のあいだには、意外と多くの道がある

障害年金は、人生の終着点ではありません。生活を支えるための制度です。

そして今は、

  • 障害年金
  • 就労移行支援
  • リワーク支援
  • デイケア
  • 障害者雇用

これらを組み合わせながら、自分に合ったペースで社会とのつながりを取り戻していける時代になってきていると言われています。

もし今、「働けない自分には価値がない」と感じているなら、少し立ち止まってみてください。

社会復帰とは、いきなり元通りになることではありません。少しずつ生活を整えながら、自分のペースで社会との接点を取り戻していくこと。選択肢は、以前よりずっと増えています。

どんなきっかけからその「働けない自分」という感覚が生まれたのか。そこを一緒に整理できる場所が、今はちゃんとあります。一人で抱えなくていい、ということだけは、ここでお伝えしておきたいと思います。


参考資料

  • 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_012.html
  • 厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40524.html
  • 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「リワーク支援」https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/tokyo/reworkshien.html
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

臨床心理士として20年ほど活動しており、病院、地域、教育の方面で、お子様から成人、高齢の方まで関わっていました。医療・精神科・メンタルヘルス・認知行動療法に強い記事を執筆✍️ 子育て/発達支援/福祉の情報発信や、千葉・柏エリアの地域紹介も行います。
資格:臨床心理士・公認心理師・MOS

コメント

コメントする

目次